ニオイの系統樹
化学構造で辿る、匂いの「家系図」
生物に系統樹があるように、匂い物質にも化学構造による「系統」があります。
含硫黄化合物、テルペン、芳香族…枝を辿って匂いの世界を探検しよう。
硫黄(S)を含む分子。卵の腐敗臭から温泉、にんにくまで幅広い。嗅覚閾値が極めて低く(ppb〜ppt)、微量でも強烈に感知される。
SH基(スルフヒドリル基)を持つ。都市ガスの着臭剤にも使われるほど、極めて低濃度で検知可能。
硫化水素(H2S)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジスルフィド結合を持つ化合物。腐卵臭や海の臭い。
窒素(N)を含む分子。アンモニアの刺激臭から、インドールの複雑な香り、ピリジンの焦げ臭まで。
アミノ基(-NH2)またはNH3を持つ。魚臭、腐敗臭、尿臭の主成分。トリメチルアミン(TMA)は魚臭の本体。
二環性の含窒素芳香族。低濃度では花のような甘い香り、高濃度では糞便臭。ジャスミンにも含まれる二面性を持つ分子。
含窒素ヘテロ環。タバコの3-エテニルピリジン、焙煎・加熱で生じるピラジン類(メイラード反応)。
イソプレン単位(C5H8)の繰り返しから成る天然香気成分。植物の香りの主役で、数万種が知られる。
イソプレン2個(C10)。リモネン、リナロール、メントール、ピネンなど。柑橘・ハーブ・針葉樹の香り。
イソプレン3個(C15)。ウッディで深みのある香り。サンダルウッド、パチュリ、ヒノキの心材成分。
ベンゼン環を含む化合物。バニラのバニリン、シナモンのシンナムアルデヒド、燻製のフェノール類など。
C6-C3骨格。バニリン、オイゲノール、桂皮アルデヒド。スパイス・甘い香りの多くがこの系統。
トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドなど。建材・塗料から揮発する化学的な刺激臭。シックハウス症候群の原因。
脂質の代謝・酸化から生じる。加齢臭(ノネナール)、汗臭(イソ吉草酸)、青臭さ(ヘキセナール)のもと。
酢酸(C2)、プロピオン酸(C3)、酪酸(C4)、イソ吉草酸(C5)。汗・足・チーズの酸っぱい臭い。皮膚常在菌が皮脂を分解して生成。
CHO基を持つ。2-ノネナール(加齢臭)、ヘキサナール(青臭さ)、trans-2-デセナール(カメムシ)。脂質過酸化で生成。
シス-3-ヘキセナール、シス-3-ヘキセノールなど。植物が傷つくと放出するC6アルデヒド/アルコール。青葉の香り。
カルボン酸とアルコールの脱水縮合体。フルーティで甘い香りの主役。果物・花・発酵食品に含まれる。
アミノ酸と糖の加熱反応(メイラード反応)で生じる化合物群。焙煎・調理の香ばしさ、パンの焼き香り。ピラジン類、フラノン類、フルフラール等を含む。
細菌・真菌・放線菌の代謝で発生する揮発性成分。腐敗、発酵、カビ臭のもと。
乳酸菌、酵母、カビ、Moraxella属菌などの代謝産物。
放線菌(Streptomyces)が産生するゲオスミン(C12H22O)。雨上がりの土(ペトリコール)、水道水のカビ臭の本体。
テルペンアルコール(リナロール、ゲラニオール)とノルイソプレノイド(イオノン)が織りなす花の香り。多数の化合物が調和して「花らしさ」を作る。
カロテノイド分解物(β-ダマセノン、イオノン)やメイラード反応と無関係な食品香気成分。蜂蜜、紅茶、緑茶など。
大環状ケトン(ムスコン)、大環状ラクトン(マクロライド)。ムスクのような持続性のある動物的な香り。
特定の化学物質ではなく、生活空間や自然環境における複合的な匂い体験。
単一の化学系統では分類しきれない、複数系統の化合物が混合した匂い。発酵食品や腐敗物に多い。
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