臭い匂い生活環境
古い油(酸化油)
Rancid Oil Odor
香りの強さ:楽に感知できるにおい
臭気の客観指標
臭気強度(6段階臭気強度表示法)
3 / 5
楽に感知できるにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.0045 ppm
代表成分: Hexanal
出典: Nagata Y. (2003) Measurement of odor threshold by triangle odor bag method, Odor Measurement Review, pp.118-127
※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。
香りの説明
使い古した揚げ油や酸化した食用油から漂う、不快で鼻につく「油焼け」の臭い。不飽和脂肪酸の自動酸化で生じるアルデヒド類(ヘキサナール、(E)-2-デセナール)が、古い油特有のえぐみのある悪臭を形成する。
主な化学物質
ヘキサナール(E)-2-デセナール(E,E)-2,4-デカジエナールアクロレインマロンジアルデヒド
暮らしとの関わり
- 使い古した揚げ油の印象
- 台所に残る油焼けの臭い
- 揚げ物店周辺の油臭
- 酸っぱく刺激的な香り
対策
- 揚げ油の適切な交換(酸価2.5以下を目安)
- 油の冷暗所保存(光と熱の遮断)
- 抗酸化物質(ビタミンE)入りの油の使用
- 使用済み油の速やかな廃棄
エビデンス
1998Journal of the American Oil Chemists' Society (Frankel)
食用油の自動酸化メカニズムを包括的にレビュー。リノール酸のビスアリル位水素の引き抜きから始まる連鎖反応で過酸化物が生成され、二次分解でヘキサナール、(E,E)-2,4-デカジエナール等のアルデヒド類が生成される経路を詳述。
2002Food Chemistry (Guillén & Cabo)
加熱油の劣化をGC-MSとフーリエ変換赤外分光法(FTIR)でモニタリングし、(E,E)-2,4-デカジエナールが「古い揚げ油の匂い」の主成分で嗅覚閾値が0.07 ppbと極めて低いことを報告。
トリビア
- 食用油の酸化は「自動酸化(auto-oxidation)」と呼ばれる連鎖反応で、不飽和脂肪酸のビスアリル位の水素が引き抜かれてラジカルが生成し、酸素と反応して過酸化物→アルデヒド類に分解される。
- 揚げ油の劣化の指標として「酸価」と「過酸化物価」が使われ、日本の弁当・惣菜衛生規範では酸価2.5以下、過酸化物価30以下が基準。酸化臭は過酸化物がアルデヒドに分解される二次酸化で発生する。
- (E,E)-2,4-デカジエナールは「古い揚げ油の匂い」の主成分で、嗅覚閾値が0.07 ppbと極めて低い。中華料理店の換気扇から排出されるこの成分が周辺の油臭苦情の原因となることがある。

編集部の解説
古い油(酸化油)のにおいは、むわっと鼻につく油焼けの臭いです。えぐみや酸っぱさ、刺激を含んだ印象があり、使い古した揚げ油や酸化した食用油から立ち上がります。台所で鍋や調理器具に残った油、揚げ物をした後の調理環境などで気づきやすい香りです。
このにおいの土台にあるのは、不飽和脂肪酸の自動酸化です。不飽和脂肪酸のビスアリル位から水素が引き抜かれてラジカルが生じ、酸素と反応すると過酸化物になります。その後、過酸化物が分解する二次酸化によってアルデヒド類が生まれ、古い油らしいにおいを形づくります。ヘキサナールや(E)-2-デセナールのほか、(E,E)-2,4-デカジエナール、アクロレイン、マロンジアルデヒドも関連する成分です。
揚げ油を使う家庭の台所だけでなく、揚げ物を扱う店の周辺でも出会う香りです。とくに中華料理店の換気扇から出る油臭として、周辺で気づかれることがあります。食用油の酸化を表す指標には酸価や過酸化物価があり、見た目だけではわかりにくい油の変化を考える手がかりになります。
香りを扱うときは、油を使った時期や保管状態を意識し、においに変化が出たものを新しい油と混ぜて使わないことがコツです。換気扇や調理環境に残った油のにおいは、発生源をたどって確認します。香りを観察するなら、少量を無理に近づけず、むわっとした油臭、えぐみ、酸っぱさ、刺激のどこが目立つかを分けて捉えると特徴をつかみやすくなります。