いい匂い食べ物・飲み物
栗
Chestnut (Kuri)
香りの強さ:楽に感知できるにおい
臭気の客観指標
臭気強度(6段階臭気強度表示法)
3 / 5
楽に感知できるにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.0002 ppm
代表成分: Methional
出典: van Gemert, Odour Thresholds, 2011; Buttery et al.
※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。
香りの説明
焼き栗や栗ご飯から漂うホクホクと甘い穀物系の芳香。加熱により遊離アミノ酸と糖のメイラード反応が進行し、ピラジン類のナッティな香りとマルトールの甘い香りが秋の味覚を演出する。
主な化学物質
メチオナール2,5-ジメチルピラジンマルトールフルフラールヘキサナール
暮らしとの関わり
- 秋を感じる食卓の香り
- 焼き栗の香ばしい印象
- 栗ご飯に家庭的な温かさ
- 渋皮煮の深い色と香り
エビデンス
2004Food Chemistry (Krist et al.)
焼き栗の揮発性成分をSPME-GC-MSで分析し、メチオナール、2,5-ジメチルピラジン、フルフラールが加熱栗の主要香気成分であることを報告。メイラード反応の寄与が大きいことを確認。
2010Journal of the Science of Food and Agriculture (Neri et al.)
ニホングリとヨーロッパグリの香気プロファイルを比較し、ニホングリはアルデヒド類(ヘキサナール、ノナナール)が相対的に多く、ヨーロッパグリはエステル類が豊富であることを報告。
トリビア
- 焼き栗の甘い香りの鍵となるメチオナールは「焼きジャガイモの匂い」とも形容される成分で、含硫アミノ酸メチオニンのストレッカー分解で生じる。嗅覚閾値が0.2 ppbと非常に低い。
- 日本の栗(ニホングリ)はヨーロッパグリや中国グリと比べて糖含量が低く、加熱後の甘い香りはデンプンのアミラーゼ分解で生じる麦芽糖のカラメル化に大きく依存する。
- 栗の渋皮に含まれるタンニンは加熱するとポリフェノール酸化酵素の作用で褐色化(ブラウニング)し、渋皮煮の独特の深い香りと色を生み出す。

編集部の解説
栗のにおいは、焼き栗や栗ご飯から立ちのぼる、ホクホクと甘い穀物系の芳香です。甘さの中に香ばしさと温かさが重なり、ウッディな印象も感じられます。台所で栗が加熱されると、秋の味覚らしい空気が広がります。
この香りを生む中心的な仕組みは、加熱による遊離アミノ酸と糖のメイラード反応です。2,5-ジメチルピラジンなどのピラジン類がナッティな香りをつくり、マルトールが甘い印象を添えます。メチオナールはメチオニンのストレッカー分解で生じ、焼きジャガイモにもたとえられる香りを示します。フルフラールやヘキサナールも、加熱された栗の香りを形づくる成分です。
栗は、焼き栗や栗ご飯として食卓に登場し、秋の季節感と結びついて親しまれています。日本の栗は、ヨーロッパグリや中国グリと比べて糖含量が低く、加熱後の甘い香りには、デンプンがアミラーゼ分解で生じる麦芽糖のカラメル化も関わります。渋皮煮では、渋皮のタンニンが加熱時の褐色化に関わり、深い色と独特の香りを生みます。
香りを楽しむなら、焼き栗、栗ご飯、渋皮煮を比べ、甘さ・香ばしさ・深さの違いに注目するとよいでしょう。加熱したての立ち上がる香りだけでなく、少し冷めたときの穏やかな甘さも観察できます。栗そのものの香りを確かめたいときは、調味を控えめにすると、マルトールやピラジン類の印象を捉えやすくなります。