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いい匂い自然・環境

藤の花

Wisteria

香りの強さ:楽に感知できるにおい

臭気の客観指標

臭気強度(6段階臭気強度表示法)
3 / 5
楽に感知できるにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.0006 ppm
代表成分: Linalool
出典: van Gemert, Odour Thresholds, 2011

※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。

香りの説明

春から初夏にかけて藤棚から垂れ下がる紫色の花房が放つ、甘くフローラルでほのかにグレープ様の芳香。リナロールを中心にcis-3-ヘキセノールのグリーンノートが加わった、上品で奥ゆかしい日本の春の花の香り。

編集部の解説

藤の花は、春から初夏の藤棚で出会う、甘くフローラルな香りです。紫色の花房から漂う芳香には、ほのかなグレープ様の印象があり、全体として上品で奥ゆかしい雰囲気をまといます。屋外の自然の中で、季節の移ろいとともに感じられる香りです。

香りの中心となる成分はリナロールです。そこへcis-3-ヘキセノールのグリーンノートが加わり、甘さの中に青々しさを添えます。さらに、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、ゲラニオールも香気を形づくる成分として含まれています。複数の揮発性成分が重なり、フローラルで穏やかな香調になります。

藤は日本の山野にも自生する身近な花で、藤棚から垂れ下がる花房と香りが、春から初夏の風景をつくります。日本にはノダフジとヤマフジがあり、花の香気プロファイルは酢酸ベンジルの比率で区別できます。栃木県のあしかがフラワーパークの大藤のように、藤の香りは花を眺める体験と結びついた観光資源にもなっています。

香りを楽しむなら、花房のそばで風に乗ってくる自然な香りを、時間帯を変えながら確かめてみましょう。藤の香りは夜間から早朝にかけて強くなり、クマバチが活動する早朝に合わせて揮発性成分の放出が増える概日リズム制御が関わります。香りの強さだけでなく、甘さ、グリーンノート、グレープ様の印象を分けて感じるのがコツです。

主な化学物質

リナロールcis-3-ヘキセノール酢酸ベンジルベンジルアルコールゲラニオール

暮らしとの関わり

  • 春の季節感を伝える香り
  • 日本の美意識と結びつく
  • 藤棚の風景を彩る芳香
  • 自然の中で楽しむ花の香り

エビデンス

2006Phytochemistry (Knudsen et al.)

花の揮発性成分の概日リズム変動を包括的にレビュー。マメ科植物の花は花粉媒介者の活動時間帯に合わせてVOC放出を制御しており、藤の花はリナロール放出が早朝にピークを示すことを報告。

2001Biochemical Systematics and Ecology (Miyake & Yagami)

日本産フジ属(ノダフジ、ヤマフジ)の花の揮発性成分を比較分析し、両種ともリナロールが主成分だが、酢酸ベンジルの比率で化学的に区別できることを報告。

トリビア

  • 藤の花の香りは夜間から早朝にかけて最も強くなる。これは花粉媒介者のクマバチが早朝に活動する時間帯に合わせて揮発性成分の放出を増加させる「概日リズム制御」によるものである。
  • 日本最大級の藤棚で知られるあしかがフラワーパーク(栃木県)の大藤は樹齢約160年、棚面積約1,000m²に達する。CNN「世界の夢の旅行先10選」に日本から唯一選出されており、藤の香りが観光資源となった好例である。
  • 藤はマメ科植物で根粒菌と共生して窒素固定を行う。やせ地でも生育でき、日本の山野に自生するノダフジ(右巻き)とヤマフジ(左巻き)の2種があり、花の香気プロファイルは酢酸ベンジルの比率で区別できる。