いい匂い食べ物・飲み物
味噌汁
Miso Soup
香りの強さ:楽に感知できるにおい
臭気の客観指標
臭気強度(6段階臭気強度表示法)
3 / 5
楽に感知できるにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.00004 ppm
代表成分: HEMF
出典: Sugawara E. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 1999
※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。
香りの説明
出汁と味噌が溶け合って立ち昇る、日本の朝の食卓を象徴する温かく旨味に満ちた芳香。HEMFの甘い発酵香にかつお出汁のグアイアコールが加わり、具材の野菜や豆腐の香りが調和した安心感をもたらす複合的な香り。
主な化学物質
HEMFグアイアコールフラネオールジメチルトリスルフィドイソアミルアルコール
暮らしとの関わり
- 朝の食卓を象徴する香り
- 発酵の甘さと旨味
- だしと具材の調和
- 家庭の記憶と結びつく
エビデンス
1999Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (Sugawara et al.)
味噌の特徴香成分HEMFを同定し、味噌の種類(赤味噌、白味噌、麦味噌)による濃度差を報告。熟成期間が長い赤味噌ほどHEMF濃度が高いことを確認。
2000Journal of Food Science (Hayase et al.)
味噌汁の加熱条件と揮発性成分の関係を分析し、80-90℃で香気成分の放出が最大になる一方、沸騰させるとHEMFやエステル類が急速に揮発して失われることを報告。「煮えばな」の科学的根拠を提示。
トリビア
- 味噌汁の「味噌の香り」の核心成分HEMFは味噌の醸造過程で酵母(Zygosaccharomyces rouxii)が産生する特徴香成分で、熟成期間が長い赤味噌ほど濃度が高い。白味噌は熟成が短くHEMF濃度が低いため、甘くマイルドな香り。
- 味噌汁は「煮えばな」(沸騰直前)が最も香り高いとされるが、これは80-90℃で揮発性成分の放出が最大になる一方、沸騰させるとHEMFやエステル類が急速に揮発して失われるためである。
- 味噌汁の香りが「日本人の原風景」と結びつくのは、嗅覚の記憶が扁桃体・海馬に直結しているためで、幼少期に毎朝嗅いだ味噌汁の香りは強い情動記憶として保存される。プルースト効果の日本版である。

編集部の解説
味噌汁は、出汁と味噌が溶け合い、湯気とともに立ち昇る、温かく旨味に満ちた香りです。味噌の発酵由来の甘さに、かつお出汁の香ばしさ、野菜や豆腐の穏やかな香りが重なり、複数の要素が調和した複合的な印象をつくります。
香りの中心にある成分の一つが、味噌の醸造過程で酵母(Zygosaccharomyces rouxii)が産生するHEMFです。HEMFは甘い発酵香に関わり、熟成した赤味噌では濃く、熟成の短い白味噌では控えめで甘くマイルドな香りになります。かつお出汁のグアイアコールに加え、フラネオール、ジメチルトリスルフィド、イソアミルアルコールなども香りの層を形づくります。
味噌汁は、日本の朝の食卓を象徴する存在です。台所で鍋から湯気が立つ場面や、野菜、豆腐などの具材を組み合わせる家庭の食事の中で親しまれてきました。その香りは、幼い頃から毎朝嗅いだ記憶など、家庭の風景と結びつきやすい香りでもあります。
楽しむなら、味噌を加えた汁を沸騰させ続けず、「煮えばな」の立ち上がる香りに注目するのがコツです。沸騰直前の湯気には、味噌と出汁の香りがまとまって感じられます。赤味噌と白味噌、具材の違いを比べると、HEMFの発酵香と野菜や豆腐の香りの重なりも味わえます。