いい匂い自然・環境
古本の匂い
Old Book Smell (Bibliosmia)
香りの強さ:何のにおいか判る弱いにおい
臭気の客観指標
臭気強度(6段階臭気強度表示法)
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何のにおいか判る弱いにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.029 ppm
代表成分: Vanillin
出典: van Gemert, Odour Thresholds, 2011; Devos et al., 1990
※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。
香りの説明
甘くアーモンド様でバニラを含む温かいウッディ香。紙のセルロースやリグニンが経年分解して生じる揮発性有機化合物の複合臭で、知的なノスタルジーを誘う。
主な化学物質
バニリンベンズアルデヒドフルフラールトルエンエチルベンゼン
暮らしとの関わり
- 甘く温かな紙の香り
- 古書店を思わせる香調
- 読み継いだ本の象徴
- 知的なノスタルジー
- 本棚で出会う香り
エビデンス
2009Analytical Chemistry (Strlic et al.)
19世紀〜20世紀の歴史的な書籍から放出される揮発性有機化合物をSPME-GC-MSで分析し、バニリン、フルフラール、酢酸など15の主要成分を同定。紙の劣化度の非破壊診断法を提案。
2011Heritage Science (Clark et al.)
紙のリグニン含有量と経年変化によるバニリン生成量に正の相関を確認。酸性紙(1850年〜1950年代の書籍)はリグニン分解が進みやすく、より強い甘い香りを放つ。
トリビア
- 2009年のStrlicら(Analytical Chemistry)の研究で古い本の匂いから15の主要揮発性化合物を同定し、本の劣化度を非破壊で診断する方法を開発した。
- 古本のバニラ様の甘い香りは、紙のリグニンが酸加水分解されてバニリンが生成されることで生じる。新しい本より古い本の方が甘く香るのはこのため。

編集部の解説
古本の匂いは、甘くアーモンドを思わせる香調に、バニラのような丸みと温かいウッディ香が重なる、穏やかな複合臭です。紙の束を開いたときや、長く棚に置かれた本を手に取ったときに感じやすく、乾いた紙の印象の奥に、かすかな甘さが漂います。
この香りは、紙に含まれるセルロースやリグニンが時間とともに分解し、複数の揮発性有機化合物が生まれることで形づくられます。バニラ様の甘さにはバニリン、アーモンド様の印象にはベンズアルデヒドが関わり、フルフラール、トルエン、エチルベンゼンなども重なって、古本特有の奥行きを生みます。
古書店や図書館の書架、家の本棚で、ページをめくる合間に出会う香りです。読み継がれてきた本の時間や、紙に刻まれた記憶を感じさせるため、古本の匂いは知的なノスタルジーと結びつきやすい香りでもあります。新しい本とは異なる、経年した紙ならではの文化的な表情です。
楽しむときは、本を強く振ったりこすったりせず、表紙や小口を静かに開いて、近づけすぎない距離で自然に感じるのがコツです。香りは本の状態や保存環境で印象が変わるため、同じ棚の本でも甘さやウッディ感の違いを比べてみるとよいでしょう。香りを残したい本は、扱いを丁寧にし、紙そのものの風合いと一緒に味わいます。