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いい匂い自然・環境

雨の匂い(ペトリコール)

Petrichor (Rain Scent)

香りの強さ:何のにおいか判る弱いにおい

臭気の客観指標

臭気強度(6段階臭気強度表示法)
2 / 5
何のにおいか判る弱いにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.000004 ppm
代表成分: Geosmin
出典: Polak & Provasi, Chemical Senses, 1992; Gerber, 1979

※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。

香りの説明

雨が乾いた地面に降り始めた瞬間に立ち昇る、土っぽく爽やかな独特の芳香。土壌の放線菌が産生するゲオスミンと、植物が乾燥期に蓄積した油分が雨滴の衝撃で空中に放出される。

編集部の解説

雨の匂い(ペトリコール)は、乾いた地面に雨が降り始めた瞬間、土っぽさの中に爽やかさや冷たさが重なる、屋外らしい芳香です。微弱でありながら印象に残りやすく、梅雨の時期や、雨を待っていた乾いた季節の景色と結びつきます。

中心となる成分は、土壌の放線菌が産生するゲオスミンです。そこに、植物が乾燥期に蓄積した油分に由来する植物由来テルペン類、2-メチルイソボルネオール(2-MIB)、オゾン、土壌由来の揮発性有機化合物などが重なります。雨滴が乾いた多孔質の地面に当たると、衝撃で微小な泡が弾け、土壌成分や植物由来の成分が空中へ放出されます。

この香りは、舗装されていない道や庭、林、畑などで、雨の降り始めに出会えます。ペトリコールという言葉は、1964年にオーストラリアの鉱物学者BearとThomasが命名しました。ギリシャ語のpetra(石)とichor(神の血液)を組み合わせた言葉で、雨と大地を結ぶ香りの呼び名として定着しています。

楽しむなら、雨が乾いた地面に触れた直後に、風向きや場所を変えながら短く味わうのがコツです。土や植物の近く、屋外で感じると、成分の重なりによる違いにも気づきやすくなります。香りを強くしようとせず、雨脚や地面の状態で移ろう微かな印象を、その場の記憶とともに楽しみましょう。

主な化学物質

ゲオスミン2-メチルイソボルネオール(2-MIB)オゾン植物由来テルペン類土壌由来の揮発性有機化合物

暮らしとの関わり

  • 土と雨の爽やかな印象
  • 梅雨を彩る季節の香り
  • 自然を身近に感じる香り
  • 雨の日の記憶と結びつく

エビデンス

1964Nature (Bear & Thomas)

乾燥した粘土や岩石に雨が降った際に放出される独特の芳香を「ペトリコール(petrichor)」と命名。乾燥期に植物が蓄積した油分が雨で放出されるメカニズムを初めて報告。

2015Nature Communications (Joung & Buie, MIT)

高速カメラを用いて雨滴が多孔質表面に衝突する際のエアロゾル放出メカニズムを初めて可視化。雨滴内に微小な気泡が形成され、その破裂によって土壌中のゲオスミンや有機化合物が空中に放出されることを実証。

1992Chemical Senses (Polak & Provasi)

ゲオスミンの嗅覚閾値を5 ppt(parts per trillion)と測定し、人間が検知できる最も低濃度の化合物の一つであることを報告。

トリビア

  • ペトリコール(petrichor)という言葉は1964年にオーストラリアの鉱物学者BearとThomasがNature誌で命名した。ギリシャ語のpetra(石)とichor(神の血液)の造語。
  • 2015年のMITの研究(Nature Communications)で、雨滴が多孔質の地面に衝突する際にエアロゾルの微小な泡が弾けて土壌成分を空中に放出するメカニズムが高速カメラで初めて可視化された。
  • 人間がゲオスミンを知覚できる閾値は約5 ppt(兆分の5)と極めて低く、サメの血液検知能力に匹敵する感度である。