本文へスキップ
いい匂い自然・環境

すみれ

Violet

香りの強さ:何のにおいか判る弱いにおい

臭気の客観指標

臭気強度(6段階臭気強度表示法)
2 / 5
何のにおいか判る弱いにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.0004 ppm
代表成分: alpha-Ionone
出典: van Gemert, Odour Thresholds, 2011

※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。

香りの説明

春の野に慎ましく咲くスミレ科の花が放つ、パウダリーで甘く儚い芳香。α-イオノンとβ-イオノンが「スミレの香り」の核を形成するが、嗅覚を一時的に麻痺させる特性があり「嗅いでは消え、また現れる」神秘的な花の香り。

編集部の解説

スミレは、春の野に慎ましく咲く花から、パウダリーで甘く、どこか儚い芳香として感じられます。香りは強く押し出すというより、屋外の自然の中でふと気づく繊細さが印象的です。

「スミレの香り」の核をつくるのは、α-イオノンとβ-イオノンです。これらはカロテノイドの分解産物で、ニンジンやラズベリーにも含まれます。α-イオノンには嗅覚を一時的に麻痺させる特性があり、嗅いでは消え、数秒後にまた現れるように感じられます。ほかに、(E)-2-ヘキセナール、リナロール、nonadienalも香気成分として挙げられます。

スミレは日本の春の野に親しまれてきた花で、万葉集には「すみれ」を詠んだ歌が複数あります。山部赤人の歌もよく知られています。また、スミレを愛した人物の逸話や、合成イオノンを用いる香水産業との結びつきもあり、「スミレ香調」は多くのクラシック香水に使われています。

楽しむときは、香りが消えたからとすぐに近づけ続けず、少し間を置いて再び感じてみるのがコツです。春の野で自然の香りを探すほか、スミレ香調の香水で、パウダリーな甘さと現れては消える印象をゆっくり味わうのもよいでしょう。

主な化学物質

α-イオノンβ-イオノン(E)-2-ヘキセナールリナロールnonadienal

暮らしとの関わり

  • 春の野を思わせる香り
  • パウダリーな花の印象
  • 香水の古典的な香調
  • 万葉集にも詠まれた花
  • 香りが現れては消える

エビデンス

1991Chemical Senses (Laing)

α-イオノンが嗅覚受容体を短時間で順応(疲労)させるメカニズムを研究し、スミレの香りが「嗅いでは消え、再び現れる」現象の科学的説明を提示。嗅覚順応の回復速度が他の香気成分より速いことを確認。

2003Journal of Agricultural and Food Chemistry (Brenna et al.)

イオノン類(α-イオノン、β-イオノン)の嗅覚特性と閾値を精密に測定。α-イオノンのフローラル・パウダリーな香りとβ-イオノンのウッディ・フルーティな香りの違いを嗅覚受容体の選択性で説明。

トリビア

  • スミレの香りが「嗅いでは消え、また現れる」のはα-イオノンが嗅覚受容体を短時間で疲労(順応)させるためである。数秒で嗅覚が回復すると再び香りを感じる。この現象はナポレオン妃ジョゼフィーヌがスミレを愛した理由ともされる。
  • スミレの花の香気成分α-イオノンとβ-イオノンはカロテノイドの分解産物で、ニンジンやラズベリーにも含まれる。合成イオノンは香水産業で最も重要な原料の一つであり、「スミレ香調」は多くのクラシック香水に使われている。
  • 万葉集には「すみれ」を詠んだ歌が複数あり、山部赤人の「春の野にすみれ摘みにと来し我そ 野をなつかしみ一夜寝にける」は最も有名な一首である。日本には約60種のスミレ属が自生し、種ごとに香りの強さが異なる。