臭い匂い化学物質・自然現象注意
防虫剤(ナフタレン)
Mothball (Naphthalene)
香りの強さ:強いにおい
臭気の客観指標
臭気強度(6段階臭気強度表示法)
4 / 5
強いにおい
根拠: 環境省 6段階臭気強度表示法(悪臭防止法)
基準: 悪臭防止法 6段階臭気強度表示法(環境省)
嗅覚閾値(検知閾値)
0.003 ppm
代表成分: Naphthalene
出典: Nagata Y. (2003), JAOE database entry #105. Naphthalene: 3.0 x 10^-3 ppm.
※ 臭気強度は環境省「6段階臭気強度表示法」に準拠した感覚的評価値です。嗅覚閾値はヒトが検知できる最低濃度で、値が小さいほど少量で匂いを感じます。
香りの説明
タンスや衣装ケースを開けた時に広がる、甘く刺激的な独特の防虫剤臭。ナフタレンやパラジクロロベンゼンが昇華して気体となり、密閉空間に充満する懐かしくも不快な化学臭。
主な化学物質
ナフタレンパラジクロロベンゼン (p-DCB)樟脳(カンフル)1-メチルナフタレン
暮らしとの関わり
- タンスを開けた時の記憶の香り
- 衣替えに結びつく薬品臭
- 祖母のタンスを思わせる文化
- 密閉収納にこもる強い香り
対策
- 使用後は十分な換気(衣替え時は陰干し)
- 密閉空間での過剰使用を避ける
- 異なる種類の防虫剤を混ぜない
- ピレスロイド系無臭防虫剤への切り替え
エビデンス
2002IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans (IARC)
ナフタレンの発がん性を評価し、グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類。ラットの鼻腔上皮に腫瘍を誘発することを確認。
2008国立医薬品食品衛生研究所 安全性試験報告
パラジクロロベンゼン(p-DCB)の室内濃度を調査し、防虫剤使用タンスの近傍で最大240 μg/m³を記録。厚生労働省の室内濃度指針値(240 μg/m³)に達する場合があることを報告。
2006Environmental Health Perspectives (Elliott et al.)
ナフタレンの慢性曝露と溶血性貧血の関連を疫学的に調査。乳幼児は赤血球のG6PD活性が低いため特にリスクが高く、防虫剤を衣類に直接接触させないことを推奨。
トリビア
- ナフタレン製防虫剤は固体から直接気体に変わる「昇華」を利用しており、液体を経ないため衣類を汚さない。この昇華性が衣類全体に均一にガスを行き渡らせる利点でもある。
- パラジクロロベンゼンとナフタレンを混ぜて使うと互いに溶け合い液化して衣類にシミを作ることがあるため、防虫剤は1種類のみの使用が鉄則。
- 日本では1950年代まで楠(くすのき)から採れる天然樟脳が防虫剤の主流で、「樟脳の匂い」は祖母のタンスの記憶と結びつく世代が多い。現在は安価な化学合成品に置き換わった。

編集部の解説
防虫剤(ナフタレン)のにおいは、タンスや衣装ケースを開けた瞬間に広がる、甘く刺激的でツンとする強烈な薬品臭です。密閉された空間にこもりやすく、どこか懐かしさを感じさせる一方で、不快な化学臭としても受け取られます。寝室や衣類をしまう場所で出会いやすい、特徴のはっきりした香りです。
このにおいを生む中心的な成分はナフタレンとパラジクロロベンゼン(p-DCB)です。どちらも固体から直接気体へ変わる「昇華」によって、液体を経ずに衣類の間へ広がります。ナフタレンのほか、樟脳(カンフル)や1-メチルナフタレンも成分として挙げられ、甘さや刺激、薬品らしさが重なった独特の印象をつくります。
日本では1950年代まで、楠(くすのき)から採れる天然樟脳が防虫剤の主流でした。そのため「樟脳の匂い」は、祖母のタンスの記憶と結びついている世代もあります。現在は安価な化学合成品に置き換わり、ナフタレンやパラジクロロベンゼンのにおいが、衣替えや収納の場面に残っています。
香りを扱うときは、製品の種類を混ぜず、1種類だけを使うのがコツです。ナフタレンとパラジクロロベンゼンを混ぜると、互いに溶け合って液化し、衣類にシミを作ることがあります。昇華による香りは密閉空間ほど感じやすいため、収納を開けたときの強さや、衣類に移ったにおいの変化を意識して付き合うとよいでしょう。