ワキガ(腋臭症)は、日本人の約10〜15%が該当すると推定される体臭の悩みです。ドラッグストアには多くのデオドラント製品がありますが、そもそもワキガがなぜ発生するのか、その科学的なメカニズムを理解している方は少ないでしょう。

アポクリン汗腺とエクリン汗腺の違い

アポクリン汗腺とエクリン汗腺の違いのまとめ

人間の皮膚には2種類の汗腺が存在します。全身に分布するエクリン汗腺と、脇の下・耳周辺・陰部に集中するアポクリン汗腺です。Sato et al.(1987)によると、エクリン汗腺から出る汗はほぼ無臭の水分ですが、アポクリン汗腺からの分泌物にはタンパク質・脂質・ステロイド類が含まれています。

においが発生するメカニズム

においが発生するメカニズムのまとめ

重要なのは、アポクリン汗腺からの分泌物自体はほぼ無臭であるという点です。Leyden et al.(1981)の研究で明らかになったのは、皮膚常在菌がアポクリン汗の成分を分解することで初めてにおいが発生するというメカニズムです。

特にCorynebacterium属の細菌が重要な役割を果たしています。Natsch et al.(2003)は、この細菌がアポクリン汗中のグルタミン酸抱合体を加水分解し、3-メチル-2-ヘキセン酸(3M2H)などのにおい物質を遊離させることを突き止めました。

遺伝的要因:ABCC11遺伝子

遺伝的要因:ABCC11遺伝子のまとめ

Yoshiura et al.(2006)の画期的な研究により、ワキガの発症にはABCC11遺伝子の一塩基多型(SNP)が深く関わっていることが明らかになりました。この遺伝子はアポクリン汗腺の分泌機能に関与しており、特定の遺伝子型を持つ人はアポクリン汗の分泌量が多くなります。

東アジア人ではこの遺伝子の変異型が多いため、ワキガの頻度が比較的低いとされています。一方、ヨーロッパ系やアフリカ系の集団では野生型が多く、ワキガの頻度が高い傾向にあります。

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まとめ

ワキガは「アポクリン汗腺の分泌物 × 皮膚常在菌の分解」によって発生し、その背景にはABCC11遺伝子が関わっています。対策としては、①菌の繁殖を抑える、②汗の量を減らす、の2つのアプローチが科学的に有効です。