
アールグレイの香りでおなじみのベルガモット。「リラックスに良い」とよく言われますが、実際にはどんな化学成分が含まれていて、どんな研究で確認されているのでしょうか。この記事ではベルガモット精油の主成分3種類と、論文ベースのエビデンス、そして注意すべき光毒性までを科学的に整理します。
ベルガモットの香り成分は3つに集約される
ベルガモット精油の特徴的な香りは、主に**リモネン(約40%)・リナリル酢酸(約31%)・リナロール(約10%)**の3成分でほぼ説明できます。柑橘の透明感、ラベンダーに似た花の甘さ、深みのある華やかさ。すべてこの組み合わせから生まれています。
出典: Dugo et al., Journal of Essential Oil Research (2012); 産地・搾汁条件で変動あり
これらは香水業界では「シトラスとフローラルの橋渡し」と呼ばれ、シングルノートでも複雑性のある香りに仕上がる理由になっています。

主成分の化学と香り特性
リモネン — 柑橘の透明感
リモネン(Limonene)はオレンジ・レモンなど柑橘類の果皮に豊富に含まれるモノテルペン炭化水素です。d体(R-リモネン)は爽やかなオレンジ調、l体(S-リモネン)はやや松脂寄りの香りを示します。ベルガモットに含まれるのは主にd体で、トップノートの軽やかさを担当します。
揮発しやすく分子量が小さいため、香水ではトップノート(最初の数分〜数十分)で立ち上がる成分です。揮発のしくみは香水が時間で変わる理由|ノートの揮発化学で詳しく解説しています。
リナリル酢酸 — 上品な甘さの正体
リナリル酢酸(Linalyl acetate)はエステル類で、ベルガモットを「ベルガモットらしく」している立役者です。フローラルで甘く、わずかに果実的なニュアンスがあり、柑橘成分と組み合わさることで他の柑橘精油には出せない上品さを作り出します。
ラベンダーやクラリセージにも含まれますが、ベルガモットほど高濃度の柑橘成分と共存している精油は少なく、これが「ベルガモット独特の華やかな柑橘」というキャラクターの源になっています。
リナロール — 持続するフローラル
リナロール(Linalool)はモノテルペンアルコールで、ローズウッドやコリアンダー、ラベンダーにも含まれる成分です。リモネンより揮発が遅く、香りの中盤を支える役割を果たします。
リナロールの心理生理効果は単体でも研究が進んでおり、詳細はリナロールの科学|ラベンダーの香りはなぜ癒すを参照してください。
研究で確認されているリラックス・抗不安エビデンス
ベルガモットの効果については、ヒトと動物の両方で複数の研究があります。
唾液コルチゾール低下 — Watanabe ら (2015)
41名の健康女性を対象としたランダム化クロスオーバー試験では、ベルガモット精油の蒸気を15分吸入した後、唾液中コルチゾールが有意に低下し、心拍変動の高周波成分(HF)が上昇したと報告されています。HFの上昇は副交感神経活動が高まったことを示します(Watanabe et al., 2015)。
Bergamot could be used as a relatively simple form of stress reduction, which might be useful in our modern society plagued by chronic stress.— Watanabe E et al., Forschende Komplementärmedizin (2015)
待合室でのポジティブ感情改善 — Han ら (2017)
メンタルヘルスクリニックの待合室で実施されたパイロット研究では、ベルガモット精油を15分間ディフューズした条件で、患者の自己報告ポジティブ感情が有意に改善したと報告されました(Han et al., 2017)。日常的な空間での介入研究という点で実用性が高い研究です。
神経回路の解明 — Zhu ら (2025)
直近の動物研究では、ベルガモット香気の抗不安様作用が前嗅核(AON)から前帯状皮質(ACC)に投射するグルタミン酸作動性ニューロン回路を介することが特定され、メカニズムレベルの理解が進んでいます(Zhu et al., 2025)。
香りが脳に作用する経路の全体像はアロマセラピーは本当に効く?科学的根拠を解説でまとめています。

注意点:ベルガプテンの光毒性とFCFオイル
⚠️ 皮膚に使う場合は要注意
ベルガモット精油にはベルガプテン(5-メトキシソラレン)というフラノクマリン類が含まれます。紫外線と反応してDNAに架橋を作り、皮膚に色素沈着や強い炎症を起こす光毒性物質として知られています。
国際的な精油安全性ガイドラインでは、通常のベルガモットを皮膚に使用する場合は全体濃度0.4%以下、または使用後12時間は日光を避けることが推奨されています(Tisserand & Young, 2014)。
ベルガプテンを蒸留や活性炭処理で除去した精油は FCF(Furanocoumarin-Free)ベルガモットと呼ばれ、光毒性のリスクが大幅に下がります。香水ブランドが「ベルガプテンフリー」「FCF」と表記するのはこのためです。
なお、ディフューザーで芳香拡散する用途では皮膚接触が起きないため、光毒性は実質問題になりません。芳香浴と皮膚使用は分けて考える必要があります。
ボディオイルや手作りコスメに使う場合は、必ずFCF表記を確認し、メーカーが提示する濃度上限を守ってください。古くなった精油は酸化により別の刺激性成分が増えるため、開封後は1年以内に使い切るのが安全側の運用です。直射日光と高温を避け、遮光瓶のまま冷暗所で保管することも酸化を遅らせる基本になります。

よくある質問
アールグレイの香り=ベルガモット精油そのものですか?
香水とアロマ用ベルガモットは何が違いますか?
夜に使うとリラックスに良いというのは本当ですか?
まとめ
この記事のポイント
- ベルガモットの香りはリモネン・リナリル酢酸・リナロールの3成分でほぼ説明できる
- 唾液コルチゾール低下・副交感神経活動上昇など、ヒトでのエビデンスが複数報告されている
- 2025年には抗不安効果の神経回路(AON→ACC)も特定された
- 皮膚使用ではベルガプテンの光毒性に注意。FCFオイルなら通常希釈で使える
- ディフューザー用途では光毒性は問題にならない
